【寄稿】「監視社会」フランス編〜ガブリエルからの手紙(フランスより)

こんにちは、皆さんに初めて手紙するガブリエルです。
皆さん、もし「アナキスト文献センター、隠しカメラで監視されてるってよ」って聞いたら、え?ってなりますよね。は?どゆこと?どゆこと!なんなんソレどゆこと!ってなったアナタにも、ならなかったアナタにも聞いてほしい。

2015年5月、様々な人々の協力に寄ってアナキスト図書室、ラ・ディスコーディアがパリ19区にオープンしたんだよ(編集部注*)。毎週月曜日の16―20時だけに開いててさ、正に「アナキスト文献センター」の様に完全寄付で運営やってて、月曜日に来れない人は連絡して~っていう感じで……ええよね、こういう場所って。

そんなラ・ディスコーディアのメンバーが何かヤバくね?ってなったのが9月下旬やった。っていうのも、アナキスト図書室ラ・ディスコーディアの直ぐ向かいには、学校があるんだけど、どうも学校側から監視されてんだよね。え?ってなったでしょ、いま。もっと具体的に言うよ。

「子どもの楽しみ・喜び」がスローガンのモンテッソーリ教育学校(20世紀初頭にマリア・モンテッソーリによって考案された教育法:ウィキペディアより)の2階に、書類が入ってそうなダンボールが沢山並んでいるような物置部屋っぽい場所があるんだけど、その窓際に変なのがあって、どうやらアナキスト図書室ラ・ディスコーディアに向けられて監視されてるっぽいんだよ。
「……っぽい」だから、事実は分からんよね?そりゃあ普通に確かめようぜってなるわな。

そこで、10月6日(火)にラ・ディスコーディアのメンバーは道渡って向かい側に行って、学校側にコンタクトを取ることに。もちろん学校側は、「ようこそ、いらっしゃいませ、どうぞどうぞ」態勢ではなく、メンバーが粘った結果やっと学校の事務・経理責任者と会えたんだけど、「何のこと?」っと彼女は恍けた。で、追い詰められた結果、彼女は事実を認めた。これさ、つまり監視カメラが学校側の責任者の許可と協力に寄って設置されたって事なんだよね。

で、「あ、そうですか、監視されてるんすか?はい分かりました」ってアッサリ帰るわけない。この事務・経理責任者に加え彼女の上司との長い長い交渉の末に、学校終了後っという条件付きで、問題の部屋への入場許可を得たラ・ディスコーディアのメンバー、はい発見、不気味な物体ありました。「何のこと?」っと恍ける必要一切ない、あるやんかシッカリここに。

ラ・ディスコーディアのメンバーは自分たちの行為が意味することを十分に承知の上で、強引に監視カメラ装置の持ち出しに成功、学校側の抵抗がありながらもね。この時、監視カメラが設置されたのは7月の2週目辺りで、学校の職員たちがコノ存在を知っていたという事も明らかになった。みんな知ってたって……あ、そうですか!皆さんグルだったんですね、そうですか!

っと、なんやかんやあって、ラ・ディスコーディアのメンバーが学校から去る時に、メンバーが何処方面に向かって行くんか?って見張って来た学校職員も居た……おまえは学校職員なんか?警察官なんか?ココ学校なの?警察署かなんなん?
ラ・ディスコーディアのメンバーは早速、監視カメラを分析し、翌日10月7日には、これらの事情と共に写真数枚をブログに公開。仕事はや!

<写真はラ・ディスコーディアのブログから転載>

問題の監視カメラは、こうなってた。
◎監視カメラのボックスは頑丈なプラスチック製(大きさ約40×25×25cm)で、プラグインに繋がれていた(バッテリーなし)
◎ボックスにはカメラのレンズ用に、直径約4cmの穴あり
【ボックス内部】
◎3本のケーブルの先には、2本の尖ったタイプのアンテナ(おそらく音取り用)と小さな正方形のセンサーあり
◎2枚のSIMカード付、GPS、3セル入力、ステレオ入力付の無線LANプロセッサー1つ
◎オレンジ会社のSIM付き電話装置(←コレが意味するのは、記録は残されないライブ送信システムになっていたという事)
◎遠隔操作が出来るカメラ1台=2段階ズーム操作可能
◎これらに加えて、ラ・ディスコーディアのメンバーでは識別できない部品もあり

この件について、10月9日付けで記事「学校設置の隠しカメラで監視されるアナキスト図書室」が出た、掲載はリベラシオン紙。
このリベラシオン紙記事によると……

7月上旬に、私服警察だという男性2人が学校に来て警察手帳を提示。しかし、2人とも名前も所属も述べなく、緊急連絡先としてケイタイの番号を置いて行った。何故に2人が学校へ訪れて、あの設置をして行ったのかは学校側には知らされなかった。

教職員や事務職員の証言として「薬物売買してるディーラーたちを撮影する為だとばかり思ってた」や「アレはディーラーたちを監視するのではなく向かい側の図書室を監視するのだと理解した。これは政治的監視であり、どうして良いのか分からなかった」があり、「10月6日(火)、学校前のアナキスト図書室から男性2人と女性1人が来て、監視カメラの引き渡しを申し出て来た。彼らは、『カメラの引き渡しがなされるまで、ココから一歩も動かない』と言った」とのことの学校側の証言が紹介されている。

学校側は例の私服警官だという2人が残していったケイタイ番号にかけるも誰も電話に出ず、リベラシオン紙記者が試しても結果は同じだったと。

そこで記者は、学校のある区域内の警察署に事情質すも何の回答も得られず、パリ検察所に問い合わせても、アナキスト図書室ラ・ディスコーディアが監視下にある等という話は無いという回答を得ただけだった。

もちろんラ・ディスコーディアのメンバーも、この記事を読んだのだが、彼らは記事を読みながら新たな事を知る。それは、学校側がラ・ディスコーディアのメンバー相手に被害届を出す方針だという事。

リベラシオン紙記事は、こんな風に終わってる。
「リベラシオン紙の取材メールに、ラ・ディスコーディアのメンバーは返答しなかった。正確に言うと、直接返答は無かった。というのも、彼らのブログには、こんなメッセージが加えられているからだ。『ジャーナリストたちへ一言―わたし達はあなた達に言及すること等、一切ない。何故なら、この社会戦争の中で、あなた達と同じく集結し闘う事にしたが、その集結・闘い方が違うからだ』」

っと、こういう話、最後まで読んでくれて、ありがとう。
じゃあね!

<編集部注*>追記:「ラ・ディスコーディア〜アナーキスト図書館」は2017年4月、「北極の華花(Les fleures Arctiques)〜革命のための図書館」と名称変更して、再活動しているということです(編集部)。

*この記事は「文献センター通信 第34号(2016年3月30日)」の掲載記事を転載したものです。


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