戦争×アナキスト
欧州編:電気工エッリコ・マラテスタ
2020年に掲載した感染症×アナキストが好評だった海老原弘子さん。この「戦時下」に新しい論考を寄稿していただきました。題して「戦争×アナキスト」。第一回目の「欧州編:電気工エッリコ・マラテスタ」を掲載します。全3回予定。
その目的が資本主義システムの打倒でない限りは、いかなる戦争も正当化できない
エマ・ゴールドマン
幻のルクリュ地理学研究所
1923年9月1日に発生した関東大震災はアナキズムの歴史にも消えない爪痕を残している。二つの巨大な喪失をもたらしたからだ。一つはもちろん、憲兵による大杉栄と伊藤野枝の虐殺で、国家権力による最も過酷なアナキスト弾圧の例として世界のアナキズム史にしっかりと刻まれている。そして、もう一つは人間中心に語られる歴史の中では脚注にひっそりと書かれるような出来事のため、あまり知られていないアナキストの蔵書に纏わる大悲劇である。東京を襲った地震が誘発した火災によって、都内にあったアナキスト地理学者エリゼ・ルクリュの蔵書六万冊が焼失したのだ。
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