戦争×アナキスト
スペイン編:交換手ルシア・サンチェス・サオルニル
2020年に掲載した感染症×アナキストが好評だった海老原弘子さん。この「戦時下」に新しい論考を寄稿していただきました。題して「戦争×アナキスト」。第3回目となる最終回「スペイン編:交換手ルシア・サンチェス・サオルニル」を掲載します。
スペイン内戦において私たちの世代が学んだのは、理のある者が敗北すること、力が魂を破壊すること、そして、時には勇気が報われないこともある、ということだった アルベール・カミュ
黒と赤で覆われた棺
1940年5月17日米国シカゴではエマ・ゴールドマンの葬儀が営まれていた。徴兵反対運動を理由にアレクサンダー・バークマンと共に1919年に国外追放となって以来、初めて米国への帰国を許され、その遺志に沿って 1886年のヘイマーケット事件で処刑されたアナキストたち、いわゆる「シカゴの殉教者」が眠る墓地に埋葬されることになったのだ。その棺を覆う黒と赤の旗には<SIA-AIT>と<FAI>という文字が見える。ゴールドマンが参加していた組織の略称で、SIA(Solidaridad Internacional Antifascista/反ファシズム国際連帯)、AIT(Asociación Internacional de trabajadores/国際労働者協会/インターナショナル)、 FAI(Federación Anarquista Ibérica/イベリア・アナキスト連盟)と、すべてスペイン語である。
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